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「社内副業でAIを活かす」を制度から逆算する 募集の探し方・月20時間の成果設計・報酬と労働時間の現実【2026年8月版】

AI副業・収益化 著者: 福朗
自部署と他部署を光の橋でつなぎ、その上をAIの成果物を抱えて渡っていく会社員を表現したイメージ図
この記事の結論
  • 社内副業の募集に「AI」と書かれたポストはほとんど出てこない。探すのは「AI案件」ではなくAIで詰まっている業務のほう。
  • 制度の設計は会社ごとにバラバラ。まず「就業時間内か外か」「追加報酬があるか」「上限時間はいくつか」の3点を確認しないと、テーマの選び方を間違える。
  • 社内副業は同じ会社との1つの労働契約。社外副業で論点になる労働時間の通算・確定申告・住民税の話が、そもそも発生しない。
  • 上限は月20時間・3〜6か月が主流。この枠で成果を出せるAIテーマには条件があり、そこを外すと「途中で終わった人」になる。

勤め先に社内副業や社内複業の制度がある。生成AIも日常的に使っている。それなら「AIで何かやります」と手を挙げれば通りそうなものですが、実際に社内の募集一覧を開いてみると、期待していたようなAIのポストは並んでいません。多くの人がここで止まります。

この記事は、制度がある会社に勤めている社員側の視点で書いています。「社内副業 AI 制度」で検索して出てくる記事のほとんどは人事担当者向けの制度設計の解説で、社員が何に応募し、何をつくり、どう評価されるかについてはほぼ触れられていません。ここではその抜けている部分を、実際に公表されている各社の制度条件から逆算して埋めていきます。

結論:探すのは「AI案件」ではなく「AIで詰まっている業務」

社内副業の募集ポストに「生成AIエンジニア募集」のような枠が並ぶことは、まずありません。KDDIが2020年に制度を開始したときの募集内容を見ると、「au PAYアプリのスーパーアプリ化に向けた企画」「地域ICT支援チーム」「ビッグデータ分析における機械学習のアルゴリズム検討と仕組みづくり」といった事業側の課題としてポストが立っていることがわかります。AIは手段として中に埋まっているだけです。

これは制度の設計上そうなります。募集を出すのは受け入れ側の部署で、彼らが書くのは「困っていること」であって「使ってほしい技術」ではないからです。つまり社内副業でAIを活かしたい人がやるべきなのは、AIというラベルを探すことではなく、AIを当てれば短期間で軽くなる業務を、募集文の裏側から読み取ることです。

そしてこの「詰まっている業務」は、いま社内に確実に存在します。帝国データバンクが2026年3月に実施した調査(有効回答10,312社)では、生成AIを活用している企業は34.5%、従業員1,000人超の企業に限れば63.6%に達しています。一方で、活用にあたっての課題として「専門人材の不足」を41.3%、「活用範囲が不明確」を40.0%の企業が挙げています。大企業ほど導入は進んでいるのに、それを回せる人と使いどころが足りていない、という状態です。

多数の部屋からなる建物のうち、いくつかの部屋だけが光って見える様子で、社内に点在するAI活用ニーズを表した概念図
社内のAIニーズは、部署をまたいで点在している。全社的なAIプロジェクトとして立ち上がる前の、「その部署だけが困っている状態」で止まっているものが多い。

同じ調査で、実際の活用業務は「文章の作成・要約・校正」が45.1%で突出し、「情報収集」21.8%、「企画立案時のアイデア出し」11.0%と続きます。データ集計・分析は7.4%、コード生成は5.9%にとどまります。裏を返せば、文章まわり以外の用途は、まだほとんどの部署で手つかずということです。ここが社内副業で入り込む余地になります。

視点の切り替え:「AIの仕事はありませんか」と聞くと、たいてい「うちはまだそこまで」と返ってきます。「毎月手作業でやっていて面倒な作業はありますか」と聞くと、話が出てきます。社内副業のテーマは、後者の質問から生まれます。

自分の会社の制度が「どの型」かを先に確かめる

社内副業という言葉は同じでも、設計は会社ごとにかなり違います。ここを確認せずにテーマを考えると、「就業時間外にやる前提だった」「思ったより時間の上限が短かった」といったズレが後から出てきます。公表されている制度を並べると、おおむね3つの型に分かれます。

3つの型と、それぞれで狙うべきテーマ

代表例と条件追加報酬向いているAIテーマ
就業時間内・
割合型
KDDI:就業時間の約2割・最大6か月
リコー:就業時間の最大20%・原則6か月以内
丸紅:勤務時間の15%を新規事業創出に充当
原則なし
(給与は本業のまま)
期間が長く取れるので、業務プロセスそのものの設計変更を含むテーマが置ける
就業時間内・
時間上限型
コニカミノルタ「スキルシェア制度」:最大20時間/月・3か月以内の短期業務(2026年7月正式導入) あり
(業務実施に応じた追加手当)
短く区切れる単発テーマ。「1つの作業を自動化して引き継ぐ」規模が合う
就業時間外・
請負型
サイバーエージェント「Cycle」:通常業務以外のプロジェクトを就業時間外に請け負う あり
(案件ごとの報酬)
本業と切り離せる制作物・単発の成果物。自分の可処分時間との相談になる

各社の公表資料・報道をもとに整理(2026年8月時点)。制度は改定されるため、必ず自社の社内規程で最新の条件を確認してください。

注目したいのは、コニカミノルタが2026年7月に正式導入した「スキルシェア制度」です。2025年からの全社トライアルを経ての本格運用で、最大20時間/月・3か月以内という短さが特徴です。トライアル中には「月5時間の業務」といったニーズも確認されたとされており、制度全体の潮流が「半年腰を据える」から「短く切って何度も回す」方向へ動いていることがわかります。

さらにこの制度には「募集型」(社員が応募する)と「指名型」(スキルをもとに人材が指名される)の2方式があります。指名型があるということは、社内で「あの人はAIができる」と認識されているかどうかが、そのまま機会の量になるということです。この点は後半の「評価に載せる」の話に直結します。

応募前に確認する5項目

社内規程やイントラの制度ページで、次の5つを先に押さえてください。ここが埋まっていないと、あとで説明するテーマ選びができません。

制度が無い会社の場合。社内公募(社内FA)制度だけがある会社も多くあります。パナソニックの「eチャレンジ」は約20年続く社内公募制度で、現在の上司や人事を介さずに応募し、募集部門の面接を受けられる仕組みです。人員募集がなくても希望部門にアピールできる「eアピールチャレンジ」もあります。制度名が「副業」でなくても、部署をまたいで手を挙げられる仕組みがあれば、この記事の考え方はそのまま使えます

報酬と労働時間の現実|社外副業と決定的に違う3点

ここは誤解が多いところなので、先に整理しておきます。社内副業は「副業」という名前がついていますが、法律上の扱いは社外副業とまったく違います。

1|労働時間は最初から通算される(議論の余地がない)

社外副業では「本業と副業の労働時間を通算するかどうか」がしばしば論点になります。同一事業主・同一法人であれば通算が必要で、資本関係も人事的つながりもない別法人なら通算不要、といった整理です。

社内副業は同じ会社との1つの労働契約ですから、この論点自体が発生しません。本業の時間と社内副業の時間は当然に合算され、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えれば通常どおり時間外労働として割増賃金の対象になります。「別部署の仕事だから残業代の対象外」ということは、原則としてありません

なお厚生労働省では「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」で通算ルールの見直しが議論されており、通算した結果の割増賃金の仕組みを廃止する方向が報じられています(健康管理のための通算管理は残す方針)。ただしこれは異なる使用者の間の話であり、社内副業には関係しません。制度改正のニュースを見て「社内副業も割増がなくなる」と読み違えないようにしてください。

2|確定申告も住民税の切り替えも要らない

社内副業の手当は同じ会社から支払われる給与です。給与所得として本業分と合算され、年末調整で完結します。社外副業でつまずきやすい「年20万円ルール」も、住民税を普通徴収に切り替える手続きも、社内副業では出番がありません。会社に知られたくないという心配とも無縁です。この手続きの軽さは、社内副業のわかりやすい利点です。

3|「隠れ長時間労働」になりにくい

パーソル総合研究所が2025年8月に実施した第四回の副業調査では、正社員の副業実施率は11.0%と過去最高を更新した一方、副業実施者のうち26.9%が過重労働状態(こちらも過去最高)という結果が出ています。さらに本業の残業と副業を合わせた時間が月45時間を超える人が3割超おり、そのうち半数以上が本業先に申告していないとされています。

社内副業では、稼働が最初から会社の管理下にあります。時間が積み上がれば勤怠に出るため、この「見えない超過」が構造的に起きにくい。時間の安全性を買うかわりに、報酬の自由度を手放しているのが社内副業だと理解しておくと、期待値を間違えません。

社内副業社外副業
報酬制度により手当あり/なし。上限は制度が決める成果と単価しだいで青天井
労働時間本業と当然に通算。勤怠で可視化される自己管理。未申告の超過が起きやすい
税の手続き年末調整で完結確定申告・住民税の扱いを自分で判断
実績の使い道社内評価・指名につながる社外のポートフォリオになる
使えるデータ実業務の本物のデータ顧客から預かる範囲に限られる
撤退のしやすさ期間満了で自然に終われる契約の切り方を自分で考える必要

この表でいちばん重要なのは最後から2行目です。社内副業では、本物の業務データと本物の業務フローに触れられます。社外の案件では守秘義務の壁で絶対に届かない領域で、AIの効果検証ができる。これは金額に換算しにくいものの、経験としての価値はかなり高い部分です。

AIのニーズを社内で見つける4つの導線

制度の型がわかったら、次はテーマ探しです。募集一覧を眺めるだけでは見つからないので、次の4つの導線を使います。

  1. 募集ポストの「困りごと」だけを抜き出して読む

    募集文から業務名や部署名を消して、「何に困っているか」だけを箇条書きにしてみます。「問い合わせ対応が属人化している」「レポート作成に毎月時間がかかる」「議事録の整理が追いついていない」——このレベルまで分解すると、生成AIが効く場所かどうかを判断できるようになります。

  2. 全社的なAI導入が「止まっている場所」を探す

    生成AIの社内展開は「1業務のPoC → 部門展開 → 全社展開」の順で進むのが定石とされています。ということは、PoCは終わったのに部門展開で止まっている業務がどの会社にもあります。情報システム部門やDX推進部門が公開している導入状況の資料を見て、「導入済み」ではなく「検討中・一部部署のみ」と書かれている行を探してください。そこが空いています。

  3. 社内AIツールの「使われていない部署」に注目する

    会社が全社向けにAIツールを契約している場合、利用率は部署ごとに大きく偏ります。前述の帝国データバンクの調査でも、生成AI利用による悪影響として「使いこなせる人とそうでない人の格差」を18.8%の企業が挙げています。使われていない部署は、ツールが悪いのではなく、自部署の業務に翻訳できる人がいないだけであることが多い。翻訳役は社内副業と相性のいい役割です。

  4. 「AIを使いたい」ではなく「毎月やっている手作業」を聞いて回る

    社内副業のマッチングイベントや部署間のMeetupがある会社なら、そこで聞く質問を変えます。三井住友海上の「プロジェクトチャレンジ」「Meetup」には2,000名以上の登録があるとされ、こうした場は実質的にニーズの市場になっています。聞くのは「AIの課題」ではなく「毎月・毎週きまってやっている手作業」です。

4つに共通するのは、AIという言葉を一度捨てることです。社内でAIを担当している人はすでにいます。空いているのは「AIができる人」の枠ではなく、「業務を理解したうえでAIに翻訳できる人」の枠のほうです。日常の業務でAIをどこまで踏み込んで使えているかが土台になるので、ChatGPTのメモリ機能を業務で使う設定のような、自分の実務側の解像度もあわせて上げておくと話が早くなります。

月20時間で成果が出るテーマの選び方

ここが社内副業でいちばん失敗しやすいところです。制度の上限は「月20時間・3か月」または「就業時間の20%・6か月」が主流。前者なら総枠はおよそ60時間、後者でも週1日相当です。この枠に収まらないテーマを選んだ人は、期間満了時に「途中まで」を残して終わります

巨大な未加工の岩の塊から、小さく完璧に切り出された光る立方体が一つだけ分離している様子を表した概念図
大きな業務課題の全部を引き受けるのではなく、期間内に確実に完成して引き渡せる大きさに切り出す。切り出しの精度が、そのまま成果の有無を決める。

通るテーマの3条件

条件1:工数が読める

「AIで業務を改革する」は工数が読めません。「月次レポートの下書き生成をプロンプトとテンプレートで固定化する」は読めます。着手前に、作業を5つ以内の工程に分解して各工程の時間を書き出せるかどうかが判断基準です。書き出せないテーマは、まだ切り方が粗いということです。

条件2:効果を数字で検証できる

開始前に測れる数字があること。「1件あたり何分かかっているか」「月に何件あるか」「差し戻しが何%あるか」。この3つのどれかを、着手初週に必ず測っておきます。ビフォーの数字を取らないまま始めると、どれだけ良い仕組みを作っても成果として説明できません。社内副業で最も多い取りこぼしがこれです。

条件3:自分が抜けても回る形で残せる

期間が終われば、あなたは元の部署に戻ります。あなたにしか動かせないものを置いていくと、その部署にとっては負債になります。手順書・プロンプト集・チェックリストのセットで引き渡せる形かどうかを、テーマ選定の時点で確認します。この「引き継げるか」の観点は、指名型の声がかかるかどうかにも効いてきます。

枠に収まるテーマ/収まらないテーマ

収まる(60時間で完了する)収まらない(手を出さない)
問い合わせ対応の定型返信テンプレート+プロンプト整備 社内問い合わせのAIチャットボットを新規開発する
月次レポートの下書き自動生成と、確認手順の標準化 全社のレポーティング基盤を作り直す
議事録の要約フォーマット統一と、run手順の文書化 会議体そのものの設計を見直す
既存マニュアルをAIで検索しやすい形に再構成する 社内ナレッジ検索システムを導入・選定する
部署メンバー向けのプロンプト集+ミニ勉強会2回 全社のAIリテラシー教育プログラムを設計する

右列は価値がないのではなく、社内副業の枠でやるには大きすぎるという意味です。右列をやりたい場合は、その一部を左列として切り出し、実績を作ってから本務としての異動や専任アサインを狙うほうが現実的です。

もう一つ、テーマの難易度と自分のスキルの釣り合いも見ておく必要があります。社内副業は「学びながらやる」ことがある程度許容される場ですが、ゼロから学ぶ場ではありません。受け入れ部署はあくまで業務課題を解決したくて枠を出しているからです。どの順番でスキルを積むかについては、AI副業のスキルアップは「順番」で差がつくのほうで詳しく整理しています。

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エントリーで書くこと|3者合意を通す文面

KDDIの制度が社員・所属部署・副業先部署の3者合意を要件としているように、社内副業の応募は「受け入れ先に選ばれること」と「本業の上司に送り出してもらうこと」の2つを同時に通す必要があります。この2つは求めているものが違うので、伝え方を分けます。

受け入れ先に出す文面(選ばれるため)

受け入れ先が知りたいのは、あなたの熱意ではなく「この人を入れたら、うちの何が、いつまでに、どうなるか」です。次の4ブロックで足ります。

ENTRY TEMPLATE — 受け入れ先向け

【解決したい課題の理解】
募集内容を拝見し、〇〇の作業に月〇時間程度かかっている点が課題と理解しました。認識に相違があればご指摘ください。

【自分が持ち込めるもの】
現部署で〇〇業務において生成AIを使い、1件あたり〇分→〇分に短縮した経験があります。同じ考え方が今回の課題にも当てはまると考えています。

【期間内に完成させる範囲】
3か月・計60時間で、〇〇の下書き生成の仕組み手順書・プロンプト集までを完成させ、貴部署のメンバーだけで運用できる状態にして引き渡します。〇〇の開発は今回の範囲に含めません。

【最初の2週間でやること】
まず現状の所要時間と件数を計測させてください。効果を数字で示せる状態にしてから着手します。

ポイントは3つ目の「今回の範囲に含めません」を明記することです。できることを大きく見せたくなりますが、受け入れ側からすると、期間内に終わらないものを抱え込まれるほうが困ります。範囲を自分から狭く切ってくる応募者は、実務が分かっている人として読まれます。

本業の上司に出す文面(送り出してもらうため)

上司の関心は「その間、こっちの仕事はどうなるのか」です。ここに答えないまま「挑戦したいんです」と言うと、返事は保留になります。

ENTRY TEMPLATE — 所属部署の上長向け

【時間の出どころ】
月20時間は、〇〇の定例作業を今回作る仕組みで先に短縮して捻出します。持ち出しの残業では対応しません。

【本業への還元】
副業先で作る〇〇の型は、当部署の〇〇にもそのまま転用できます。3か月後に部内へ共有します。

【リスクと止め方】
本業の繁忙期(〇月)に重なった場合は、副業先と調整して稼働を落とします。判断のタイミングは〇月〇日に一度置きます。

「時間の出どころ」を空欄にしない。社内副業のデメリットとして各社の解説記事が共通して挙げるのが、本業部署と副業先の両方の上長によるマネジメントの複雑化と、本人の負担増による本業の効率悪化です。上司が身構えるのはこの2点です。先に自分から手当てを提示すると、承認のハードルは大きく下がります

評価に載せる|「やった」ではなく「残った」を記録する

リコーやKDDIの制度では、社内副業先での業務も人事評価の対象とされています。ただし「評価の対象になる」ことと「評価される」ことは別です。評価する側は、副業先でのあなたの働きぶりを直接は見ていません。見ていない人に伝わるのは、行動の記録ではなく、残ったものの記録だけです。

点々と残る光の足跡が右上の大きな結晶へと収束していく様子で、日々の記録が評価という結果に結びつくことを表した概念図
やったことの記録は、そのままでは評価に載らない。数字と引き渡し物に変換して初めて、他部署の人にも読める成果になる。

記録する4項目

項目書き方取得タイミング
ビフォー着手前の所要時間・件数・差し戻し率初週に必ず(後からは取れない)
アフター同じ指標を同じ測り方で最終月
引き渡し物手順書/プロンプト集/チェックリストの3点セット随時、最終週に整理
他部署への転用可能性「同じ型が使える業務」を2つ以上挙げる終了時

最後の「他部署への転用可能性」は省かれがちですが、これがあるかないかで評価の読まれ方が変わります。1部署の改善は担当者の手柄ですが、他部署に展開できる型は会社の資産だからです。前者は「よくやった」で終わり、後者は次の指名につながります。

コニカミノルタの制度に「指名型」があることを思い出してください。社内でスキルが可視化されていれば、次からは自分で探さなくても声がかかります。1回目の社内副業の本当の成果は、削減できた時間ではなく、2回目以降の機会が自動的に来る状態をつくることです。

社外にも持ち出せる形にしておく

社内副業の成果物そのものは会社の資産であり、当然ながら外に持ち出せません。ただし「どんな課題に、どう向き合い、何を設計したか」という抽象化された経験は、社名も数字も伏せた形で語れます。転職やその先の社外副業を視野に入れるなら、終了直後に社外向けの言い方に翻訳して残しておくと無駄になりません。実績を提案の形にまとめる手順はこちらで整理しています。

越えてはいけない線|社内だから緩みやすい4つ

社内副業は社外副業に比べて情報漏洩リスクが小さいとされます。同じ会社の中での就業だからです。ただし「社内だから安全」と「社内なら何でもいい」は違います。むしろ社内であるがゆえに緩みやすい箇所が4つあります。

1|他部署のデータを、自部署のルールで扱ってしまう

生成AIの利用ルールは全社共通でも、扱えるデータの範囲は部署ごとに違います。人事・経理・法務のデータには、自部署の感覚では判断できない制約がかかっていることがあります。着手前に「このデータをAIに入れていいか」を、副業先の担当者に明示的に確認して記録に残す。口頭の了解だけで進めないでください。

2|「機密情報は入力しない」を自己判断で運用する

社内ガイドラインの多くは「機密情報を入力しない」と書いていますが、この一文だけでは実務では機能しません。実際に線引きが必要になるのは、顧客名・取引先名、未公開の財務情報、ソースコード、特許出願前の技術情報、個人情報といった具体的なカテゴリです。個人情報保護委員会も、生成AIに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は利用目的の範囲内であることの確認が必要だと注意喚起しています。迷ったら入力しないのではなく、迷った時点で聞くのが正解です。

3|使うツールを自分の判断で増やす

手元で便利に使っているAIツールを、そのまま副業先の業務に持ち込みたくなります。しかし会社が契約しているのは特定のツールだけで、それ以外は情報の学習利用の可否が確認されていない場合があります。帝国データバンクの調査でも、生成AI活用の課題として「ルール整備の不足」が25.5%、「情報漏洩リスク」が33.5%挙げられています。ツールの追加は、成果を急ぐ場面ほど独断で起きます。使うツールは応募時点で書き出して合意しておくのが安全です。

4|本業の稼働が静かに膨らむ

就業時間内の制度でも、本業の締め切りが動くわけではありません。結果として本業を持ち帰り、勤怠に出ない時間が増えていく——これが社内副業でいちばん起きやすい失敗です。前述のとおり社外副業では実施者の26.9%が過重労働状態にあり、その多くが未申告でした。社内副業では勤怠に出る分だけ気づきやすいので、月次で自分の総労働時間を必ず確認してください。増えていたら、それは調整を頼むべき合図です。

社内副業で足りなくなったら、次はどこへ

社内副業をひととおり回すと、たいてい次のどちらかの感想が残ります。

後者について、前提を正しく持っておく必要があります。社内副業の実績は社外では相場が見えません。同じ「月次レポートの自動化」でも、社内では感謝で終わり、社外では金額がつきます。その差を実際の募集条件で確認してから判断するのが順当です。案件の探し方は媒体によって仕組みが違うので、検索型とクラウドソーシング型の違いを先に押さえておくと、無駄な登録を減らせます。

社内での実績が、外ではいくらの仕事になるのか

AI・データ領域のフリーランス案件は、求められるスキルと報酬レンジが公開されています。登録は無料で、応募せずに条件だけ見ることもできます。まずは自分がやってきたことに近い募集条件を眺めて、相場感を掴むところからで十分です。

AI・データ系の案件相場を見る

なお、いきなり社外副業から始めようとしている人には、社内副業を先に通すことを勧めます。本物の業務データで検証できる環境は、社外案件では最初は手に入らないからです。社外から入る場合の進め方はAI副業の始め方でつまずく7つの瞬間にまとめています。

よくある質問

社内副業のデメリットは?
社員側の実感として大きいのは3つです。第一に、本業部署と副業先の両方の上長が関わるためスケジュール調整と評価が複雑になること。第二に、十分な業務量の調整がないまま始めると本業の効率が落ち、負担だけが増えること。第三に、就業時間内で行う割合型の制度では追加報酬が設定されていない場合が多く、収入は増えないことです。一方で、労働時間が勤怠で可視化される、確定申告が不要、本物の業務データに触れられるといった利点は社外副業にはありません。収入を目的にするなら社外副業、経験と社内での評価を目的にするなら社内副業、と分けて考えるのが現実的です。
社内副業制度を導入している企業は?
公表されているものでは、KDDI(就業時間の約2割・最大6か月)、リコー(就業時間の最大20%・原則6か月以内)、丸紅(勤務時間の15%を新規事業創出に充当)、サイバーエージェント(就業時間外に請け負う「Cycle」)などがあります。コクヨの「20%チャレンジ」はのべ400名以上、三井住友海上の「プロジェクトチャレンジ」「Meetup」は2,000名以上の登録があるとされています。直近では、コニカミノルタが2025年の全社トライアルを経て、2026年7月に「スキルシェア制度」(最大20時間/月・3か月以内、追加手当あり、募集型と指名型)を正式導入しました。静岡ガスのように2024年から試行運用を始めた企業もあり、大企業を中心に広がっています。
パナソニックの社内で副業はできますか?
パナソニックグループには、所属部門に在籍したまま社内の他部門やグループ内の別事業会社の業務を経験する「社内複業」の仕組みがあり、2018〜2021年度で310人が利用したとされています。あわせて、約20年続く社内公募制度「eチャレンジ」(現在の上司や人事を介さずに応募し、募集部門の面接を受けられる)と、人員募集がなくても希望部門にアピールできる「eアピールチャレンジ」があります。社外副業制度も併存します。適用範囲や条件は事業会社ごとに異なるため、実際の可否は自社のイントラの規程で確認してください。
社内副業に報酬は出ますか?
制度の設計によります。就業時間内で行う割合型(KDDI・リコーなど)では、社内副業そのものに対する追加報酬は基本的に設定されておらず、給与は本業のままというのが一般的な考え方です。一方でコニカミノルタの「スキルシェア制度」は業務実施に応じた追加手当を支給する設計で、サイバーエージェントの「Cycle」は就業時間外に請け負う形で報酬が発生します。なお報酬や手当が出る場合も同じ会社からの給与ですので、本業分と合算して年末調整で完結し、確定申告や住民税の切り替えは不要です。また合計労働時間が法定労働時間を超えれば、通常どおり割増賃金の対象になります。
AI副業とは何ですか?社内副業とどう違いますか?
AI副業は一般に、生成AIなどのツールを使って成果物を作成・納品したり販売したりして収入を得る副業を指します。ライティング、画像制作、資料作成、業務自動化の請負などが代表例です。社内副業とは働く相手が違います。AI副業(社外)は自分で契約先を見つけて報酬を得るもので、収入の上限がない代わりに労働時間の管理や確定申告を自分で行う必要があります。社内副業は同じ会社の別部署の業務を担うもので、報酬は制度の範囲に限られる代わりに、本物の業務データで検証でき、成果が人事評価につながります。AIスキルを収入に換えたいなら社外、社内での立ち位置を変えたいなら社内、という使い分けになります。
この記事のまとめ
  • 募集ポストに「AI」の文字はない。読むのは業務名ではなく「困りごと」の部分。
  • 制度の型(就業時間内か外か/上限時間/追加報酬の有無)を先に確認する。テーマの大きさはここで決まる。
  • 社内副業は同じ会社との1つの労働契約。労働時間は当然に通算され、確定申告は不要。
  • 月20時間・3か月なら総枠60時間。工数が読める/数字で検証できる/引き継げるの3条件を満たすテーマだけを選ぶ。
  • 着手初週に必ずビフォーの数字を取る。取り忘れると成果が説明できなくなる。
  • ゴールは削減時間ではなく、2回目以降の機会が自動的に来る状態をつくること。
参考・出典
  1. KDDI株式会社「イノベーション創出を加速する『社内副業制度』を開始」
    https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2020/06/26/4521.html
  2. コニカミノルタ「社内人財のスキルを事業横断で活用する『スキルシェア制度(社内副業)』を正式導入」(2026年8月24日)
    https://www.konicaminolta.com/jp-ja/newsroom/2026/0824-01-01.html
  3. 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査」(2026年3月調査・有効回答10,312社)
    https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260514-genai/
  4. パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」(2025年8月実施)
    https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/sidejob4/
  5. 厚生労働省「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03569.html
  6. HRプロ「『社内副業』の定義やデメリットとは? 気になる報酬や評価、企業事例も解説」
    https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=2254
  7. エンファクトリー「社内副業制度とは?導入事例、制度設計の流れ、メリットとデメリットを徹底解説」
    https://enfactory.co.jp/ekkyo-gakushu/column/3447/
福朗

AI副業の実践者/メディア運営。生成AIを使った業務改善と副業の現場を、制度と数字の両面から検証して発信しています。

福朗
福朗

AI副業の実践者 / メディア運営。AIを活用した業務自動化と副業の仕組み化について発信しています。

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